こんにちは。高知県高知市で情報処理支援機関として企業さまに伴走支援を提供している、株式会社ICUの川島です。
AIを業務に取り入れる企業が増えてきました。文書の作成、データの整理、問い合わせ対応の下書き。「もうAIなしでは仕事が回らない」という声も、珍しくなくなりました。
そんな中、2026年6月12日に、少しぞっとする出来事がありました。
こんなご相談をいただくことがあります。
「AIを業務で使い始めたんですが、急に使えなくなることってあるんですか?」
結論としては、あり得ます。しかも今回は、AI開発企業のトラブルではなく、アメリカ政府の判断によって突然止まりました。この出来事から、AIを業務で使うときに何を備えておくべきか、整理してみます。

リリースからわずか3日で、世界中が締め出された
2026年6月10日未明、AI開発企業のAnthropic(アンソロピック)が、最新AIモデル「Claude Fable 5」を公開しました。従来モデルを大きく上回る性能で、公開直後から世界中のユーザーが業務に使い始めていました。このモデルに合わせて業務フローを見直し始めた企業もあったはずです。
ところが、わずか3日後。6月13日の早朝6時過ぎ(日本時間)に、米国政府が輸出管理指令を出しました。「国家安全保障上の理由により、外国人によるFable 5へのアクセスをすべて停止せよ」という内容です。
同日午前9時50分頃にはAnthropicがSNSで停止を告知。そして午前11時前には、実際にサービスが遮断されました。わずか数時間の出来事でした。
私自身もこのモデルを業務で使っていましたが、作業中に突然エラーが表示され、アクセスできなくなりました。前触れは一切なく、慌てて別のモデルに切り替えてしのぎました。
他のClaudeモデルは引き続き使えますが、最新のFable 5だけは、誰も使えなくなったのです。
なぜ「全員停止」になったのか
ここが大事なポイントです。政府の指令は「外国人のアクセスを止めろ」でした。本来であれば、アメリカ国民には影響がないはずです。
しかし実際には、Anthropicは全ユーザーに対してFable 5を停止しました。理由は、AIサービスの利用者が「アメリカ人か外国人か」をリアルタイムで見分ける仕組みがなかったからです。
「外国人だから止められた」のではなく、「外国人がいるから、全員まとめて止めた」。これが実際に起きたことです。日本でAIを使っている私たちは、この構造のど真ん中にいます。

ハシゴは、突然外される
今回の件で改めてはっきりしたのは、AIサービスは、アメリカ政府の判断ひとつで一瞬で止められるということです。
現在、業務で実用できるレベルのAIサービスといえば、OpenAIのChatGPT、GoogleのGemini、AnthropicのClaudeが主なところです。SpaceXの上場で話題のXもGrokというAIを提供していますが、回答の正確さという点ではまだ業務利用には不安が残ります。いずれにしても、これらはすべてアメリカの企業が開発している。どのAIを選んでも、同じ構造のリスクを抱えています。
日本からも有力なAI開発企業が出てきてほしい。これは切実な話です。今のままでは、心臓を握られた状態で仕事をしているようなものですから。
ただ、嘆いていても状況は変わりません。現実的に、今の私たちにできる備えを考えましょう。
今日からできる備えは、1社依存をやめること
AIを業務に組み込んでいる企業がまず確認すべきことは、「今使っているAIが止まったら、明日の業務は回るか?」です。
もし答えが「回らない」なら、別のAIサービスでも同じ業務ができるよう準備しておく必要があります。やることはシンプルで、普段使っているAIへの指示を、別のAIにもそのまま投げてみるだけです。ChatGPTを使っているならGeminiやClaudeで、Claudeを使っているならChatGPTやGeminiで。同じ結果が出るか確認しておけば、いざという時に慌てずに済みます。
また、できれば開発元の国も分散させたいところです。現時点ではアメリカ以外の有力な選択肢が少ないのが正直なところですが、今後の動向は注意しておきましょう。ちなみに、インターネットに接続せずに手元のパソコンで動かせる「ローカルAI」という選択肢もあります。こちらについてはまた別の機会にお話しします。

問題が起きた時こそ、立ち止まるチャンス
今回のような出来事は、自分たちのAIの使い方を見直すいい機会です。
大事なのは、1社のサービスに頼り切らないこと。そして、止まったときに冷静に切り替えられる準備をしておく。さまざまな問題を見てリスクを予測し、対応方法を考える。その積み重ねが、AI活用の実力になっていきます。
まずは一つ。「今使っているAIが止まったら?」を、一度考えてみるところから始めましょう。