「全部自分で」から降りることも、経営力です

こんにちは。株式会社ICUの川島です。

社員が5人、10人くらいの会社だと、社長が営業も経理も採用もホームページの更新もやっている、という状態は珍しくありません。人を増やす余裕はないし、自分が一番わかっているし、頼むより自分でやった方が早い。そうやって走り続けている社長さんは本当に多いです。

こんなご相談がありました。

「やることが増えすぎて、肝心の営業に時間が取れなくなってきました。でも外に頼むとなるとお金もかかるし、うまくいくかも不安で……。」

よくわかります。ただ、結論としては、全部を自分で抱える必要はありません。外の力を借りるのは手抜きではなく、経営判断です。うまく組むためにはちょっとしたコツがあるので、今日はそのあたりを整理してみます。

社長が何でも屋になる理由

小さな会社で社長が何でもやるのには、構造的な理由があります。

一つは人手の問題です。専任の担当者を雇う余裕がないから、空いている人・・・つまり社長がやるしかない。もう一つは「自分が一番知っている」という事実です。創業から会社を見てきた人は、確かにどの仕事もそれなりにこなせてしまいます。

ただ、こなせることと、それが社長の仕事かどうかは別の話です。社長にしかできない仕事は「会社の方向を決めること」と「人や取引先との関係をつくること」です。そこに時間を使えていないなら、忙しさの中身を見直すタイミングかもしれません。

「任せられない」の正体

外に頼もうとして、かえって面倒になった経験がある方もいると思います。

ありがちなのは、「全部お任せで」と丸投げしてしまうケースです。何をどこまでやってほしいのかを伝えないまま依頼すると、仕上がりが期待と違う。やり直しが続いて、「結局自分でやった方が早かった」となります。これは相手の能力の問題ではなく、依頼の仕方の問題です。

もう一つは、費用や納期の合意をしないまま走り出してしまうことです。「思ったより高かった」「こんなに時間がかかるとは」という不満は、たいてい最初の握りが甘かったところから生まれます。

そしてもう一つ、スポットで頼んで終わり、を繰り返しているケースもあります。毎回ゼロから説明しなければならず、相手も会社の事情を深く理解してくれません。これでは手間ばかりかかって「やっぱり自分でやろう」に戻ってしまいます。

組む前に決めておきたい3つのこと

外部の方と気持ちよく仕事を進めるために、始める前に3つだけ確認しておくと、あとがずっと楽になります。

一つ目は、役割の線引きです。「ここまではうちでやります。ここからはお願いします」という境界をはっきりさせておく。たとえばホームページの制作なら、写真や原稿の素材は自社で用意するのか、制作会社に任せるのか。ここが曖昧だと、途中で「聞いていない」が出てきます。

二つ目は、お金の流れです。総額はいくらで、いつ・どう払うのか。追加が発生する場合はどうするか。お金の話は後になるほど切り出しにくくなるので、最初に決めてしまうのがお互い一番楽です。ちなみに、月数万円の小さな業務から外部に出し始める社長さんは多いです。いきなり大きな案件を丸ごと任せる必要はありません。

三つ目は、想定外のことが起きたときの取り決めです。修正の回数、途中で方針が変わった場合の費用、万が一やめる場合の精算方法。先に話しておけば、何かあっても関係がこじれません。実際にトラブルになることはめったにないのですが、「決まっている」という安心感が、普段のやり取りもスムーズにしてくれます。

最初のひと手間が、長い信頼をつくる

小さな会社ほど外の力を借りるのは大げさに感じるかもしれません。でも、一つでも自分の手から離せる業務ができれば、社長がやるべきことに使える時間は確実に増えます。

大事なのは、頼む前にちょっとだけ手間をかけて、お互いの約束を決めておくこと。その手間が、信頼関係を長続きさせる土台になります。

今の業務の中で、いちばん手が追いついていないものを一つだけ思い浮かべてみてください。その一部だけでも、誰かに頼めないか考えてみると良いかもしれませんね。